金
有名な童話に、こんな話があります。
貧しい暮らしの男が飼うニワトリが、ある日金の卵を産みます。
次の日からもニワトリは金の卵を産み続け、男は十分な富を手にします。
それでも、男はもっと富を求めて「あのニワトリの中には金の固まりがあるに違いない。それを取り出してもっと金持ちになるぞ。」と考えてしまったのです。男は金の固まりを取り出そうとしてニワトリを死なせてしまい、再び貧しくなってしまいました。
持っていた金の卵を有効に使えば、男はもっと富を手にする事ができた筈です。金の卵は、現在のお金に置き換える事ができるのです。
3 「金」(ア) 分け方
近年、都市部では歯科医院の飽和状態により競争の激化で生き残るのが困難とも指摘されています。この競争に勝つ為には、医療の充実はもちろんですが優れた財務能力も必要とされています。
にも関わらず、開業医のほとんどが自院の財務の状況を把握せず、目先の問題に振り回されているのは何故でしょう。
財務に関してはまず、変動損益計算書を図式化した「ストラック図表」を上手に使うのが第一歩です。計算書よりも図式化している事で経営上の問題点が把握しやすい利点があるのです。このストラック図表で表される収益率でお金の分け方を常に意識する事で現状の財務状況を把握する事が出来ます。
投下した資本の回収、医療機器の導入、重要な人件費等は院長が常に損益を見ながら決定を下していきます。どこに、どれだけのお金が分けられているのか認識する事が優れた医療機関に不可欠なのです。
お金の集め方も中規模以降の医院には必要になってきますが、まずはいつ、どこに、どれだけのお金を分けるかを把握すべきです。
3 「金」「(イ) 使い方
歯科医院の規模にもよりますが、運営には相当の資金が必要になってきます。以前は融資先の業種として優良にランクされていた歯科医院ですが、競争が激化している状況を受けて融資する銀行も慎重になっていると伝えられています。
この調達した資金をどこに投資するか?これが経営者である院長の最初の重要な仕事になってきます。
近年の歯科医療は、従来の虫歯治療のみの一般歯科だけでは経営が難しい一面があり、治療のオプションを検討する必要もあります。また、人によっては「最新の設備」や「歯科医院と思えない内装」をする方もいらっしゃいます。理想の診療には高額の資金投下が必要になり、医院のコンセプトと資金に沿った慎重な投資計画が必要になってくるのです。
何より重要なのは「使ったお金をどのように回収するか」だと言えるのです。
3 「金」(ウ) 渡し方
あなたはスタッフに対して、お給料を漫然と渡していませんか?
経営者として院長は収益の上がる医院を目指しますが、患者様が多く来院する医院になる為には安心して治療を受けられるスタッフの存在が欠かせません。このスタッフが気持ちよく働ける為に、院長側から常にコミュニケーションを取る必要があります。一般に比べると医療スタッフは高給だと言われていますが、彼らは何故高給を得る事ができるのでしょうか。これには保険診療の仕組みもありますが、経営サイドの努力によるものに他なりません。しかしながら、単に雇用する側と雇用される側といったドライな関係ではスタッフのモチベーションを上げる事はできません。
一例を報酬について挙げていますが、院長としては経営面や将来の展望についてもスタッフに理解を求めるべきだと考えます。将来的に勤務する医院が発展すれば、その恩恵は当然スタッフにも反映されるのです。
どのような流れで自分達の手元にこれだけの給与としてお金が支払われるのかをスタッフに考えさせる。その結果、医院の目的と目標を院長と一致させる事こそお金の渡し方です。
これはスタッフに対する「目的」「目標」「手段」の植え付けに繋がるのです。